本書は、掲載時、多くの反響を巻き起こし第9回手塚治虫文化賞新生賞、平成16年度文化庁メディア芸術祭漫画部門大賞を受賞した、こうの史代の
同名傑作コミックで2007年7月28日に公開された映画『
夕凪の街 桜の国』(監督:佐々部清、主演:田中麗奈、麻生久美子)のノベライズであり、主人公・平野皆実、石川七波の二人を通して半世紀の時代を超えてヒロシマでの被爆を背景に家族の日常を描いた物語である。
昭和33年広島、平野皆実〈みなみ〉は同僚の打越豊から求愛されるが、彼女は被爆した心の傷と、自分が生き残った罪悪感に苦しんでいた。やがて、皆実に原爆症の症状が現れ始める――『夕凪の街』
平成19年東京、皆実の弟の旭は家族に黙って広島へ向い、父を心配した七波〈ななみ〉は、後を追う内に家族のルーツを見つめ直す――『桜の国』
私も映画を拝見したが、原作にもあるように七波の両親が結ばれる事に父・旭の実母(七波の祖母)・フジミが、母・京花との結婚に反対する挿話や七波の弟・凪生が友達である東子の両親から婚約を反対されていた事を偶然手紙を読んで知ってしまった挿話など戦後から数十年の年月が過ぎ去った現在でもなんらかの形で被爆の影がつきまとう事に驚愕しました。
そして帰りの夜行バスの中、七波が一人呟く場面やラストに電車の中で父と七波が語り合う場面は大変印象に残りました。最後に桜並木の街で満開の桜が咲き誇っていた歩道橋の上での大きなお腹をした母・京花と父・旭との馴れ初めを見守る七波の言葉も……。
母からいつか聞かされたのかもしれない。
けれどこんな風景をわたしは知っていた。
生まれる前、そう、あの時からずっと、わたしはふたりを見ていた。
そして、確かにこのふたりを選んで生まれてこようと決めたのだ――。