日本人が忘れてはならない事実のひとつが原爆です。被爆を背負わされた人間とそれを免れた人間との隔たりをも残しています。しかし、それは都合のいい側の者が勝手に作くる壁にすぎません。原爆に限定しなくても戦争という異常な事態を、21世紀の現代も引き継がされていることを実感させてくれます。
戦後の復興に尽くした人々の中に、終戦に終わりは無いと言った人がいます。あらゆる戦争の犠牲者のことを忘れてはならないのです。亡くなった人々の全てに、「生きていたという事実」があることを忘れてはならない。それこそこの作品の主題だろうと思います。
漫画が原作ということは、話し言葉が手段です。映画のシナリオを小説に書き改めた作品なのでリズムのよい展開を保ち、ストレートに主題を伝えてくれます。
こういう質の良い作品が、文芸の世界にもユニバーサルデザインを定着させていくものと期待しています。