本書は昨年暮れの発行。苦しいときは辛抱して勉強して,新たな力をつけるとか従来の力を増強するとか,現実を凝視してこれまで見落としてきたことへの対応を考えるということをするわけであります。こんなときだからこそ,あの吉田松陰について振り返っておきたい。
松陰先生は,わずか29年の生涯。山口県萩の生まれ。長州藩。日本中旅してます。でも,ペリー艦隊とともにアメリカに密航しようとしたことが咎められて牢に入れられ(約1年8か月),その後何とか出してもらって約3年松下村塾で多くの門人とともに寝起きしたのが“生涯の華”のとき。その後また暗殺指令を送りまくるなど過激な言動が問題となって藩にパクられ(安政5〈1858〉年12月),さらに江戸に移送され,結局,幕府によって処刑されてしまいます(安政6〈1859〉年10月)。超高濃度な人生。
本書のテーマは「吉田松陰における他人との出会い」(序/14ページ)だそうですが,松下村塾のスターである高杉晋作・久坂玄瑞・伊藤博文などはほとんど出番がなく(山県有朋も“棒切れ”としてちらっと登場するだけです。笑),金子重輔,黒川嘉兵衛,佐久間象山,富永弥兵衛,福川犀之助,松浦松洞,吉田栄太郎という,ほとんど一般には知られていない人との交流が描かれています。そしてこれらの人々の何人かは,松陰先生と交流があった頃が「華」だったようなんですねえ。松浦松洞,吉田栄太郎に関しては胸が苦しくなりました。童門先生の作品は毎度いろいろなことを考えさせてくれます。ありがたいことです。テレビで拝見したり講演なども拝聴しておりますので,文章からお声が聞こえてくるようなのもうれしい。
さらに今回は何と!(テレビ通販風) 巻末に,あの安倍晋三さんとの対談も掲載されています。安倍さんの後の,その場凌ぎばかりの,福田さん,麻生さんや,政権へのヨダレをたらしまくりの小沢さんなどを見ていると,少なくとも安倍さんは国のことを,純粋な気持ちで根本から考えてはいらしたなあと,(1つも賛成したいことがありませんでしたし,2度と総理大臣になってほしいとも思いませんが)何だか懐かしくなってしまいました。