つかこうへい(1948〜2010)は、最後まで現役の演出家だったと言っていい。しかし、作家としてはしばらく前から休眠中という印象を受けていた。昨年7月、唐突に肺がんで逝ったときには、ほんとにびっくりした。62歳はまだ早すぎる。強烈な存在感のあった人だけに、とても淋しいです。
この『小説熱海殺人事件』は、つかこうへいの大ヒットした代表作というべき戯曲のノベライゼーション。追悼の腰巻きのついた文庫本を書店で見かけた。角川文庫のロングセラーで、かつては盛んに読まれていたはずですが、最近はそうでもないようだ。
数十年ぶりに読みかえした感想。いささか微妙。1970年代の熱狂が完全に過去のものとなった現代の日本を痛感しました。当時の観客にバカ受けしていた数々のセリフ。強烈なギャグの毒気が抜けてしまっていることに愕然とした。キャラクターもプロットも色褪せて浮いている感じ。読みものは生きものなんですね。
「ブスをブスだって言ってなにがわるいんだよ。ブスをブスだとちゃんと言いきる、潔さがなかったから、大東亜戦争が始まったんだぞ」
はじめて読んだ若者から、この小説のいったいどこがおもしろいのかわからないので説明してほしいと真剣に言われたら、さてどうしよう。私はとっさの返答に窮するにちがいない。これは時代と寝てるあいだに賞味期限が切れてしまった作品なのか。それとも、読み手の私の感性が年のせいで衰えたのかしら。
扇谷正造の明晰な解説が、多少とも参考になるだろう、たぶん。