全体として見ると、本書が書かれた当時の政治・社会情勢に対する三島の率直な意見が述べられていることが本書の特徴と言えるのでしょうが、個人的には彼の<サディスト論>の部分に惹かれました。サディストはその言動の派手さとは裏腹に悪意や憎悪の持ち主ではないとする彼の一種の<サディスト善人論>は20世紀最後の年にオーストラリアの精神分析学者が発表したものと内容的に似ているのですが、この精神分析学者に限らず一部の精神分析学者たちによると、サディストとは「相対的に重要性の高いものの喪失を防ぐ目的で相対的に重要性の低いものを破棄する<エネルギー経済学的>人間」なのであり、このことを知っておくと、三島由紀夫という人間の理解の一助になるかと思います。