法政大学の2007年度の講義録。いろいろなモノ書きが小説の書き方について、手前味噌、自画自賛で、子供だましに好き勝手なことを言い散らしているが、島田雅彦は、きちんと大学レベルの国際的な文学文芸の批評論、ナラトロジー論の水準に立って、至極まっとうに、妥当な事例を引いてうまく伝えようとしている。内容と要約は以下のとおり。
1 小説のジャンルとは: 無意識に頼らず、神話を学び、百科全書的な得意分野を作って、他人として語ろう
2 小説の構成法: 起承転結の枠の中で、なぜ、で進め、驚き、を与えけ続けよ
3 小説でなにを書くのか:キャラクターの書き分け
4 語り手の設定: 話すように書く
5 対話の技法: 聞いたように書く
6 描写/速度/比喩: 独創的な表現の工夫
7 小説におけるトポロジー: マタギの視点
8 小説内を流れる時間: 表現時制と内容のズレ
9 日本語で書くということ: 多声で構成せよ
10 創作意欲が由来するところ: 書かずにいられない病気
11 番外篇 私の経験に即して:
全体が体系的に整理されているとは言いがたいが、とにかく事例の引き方がうまい。舞城王太郎からジャン・ジュネまで、必要に応じて、ぴったりとしたものを拾ってきている。抽象的になりがちな批評論やナラトロジー論が、これらの事例によって、生き生きとしていく。べつに小説の書き方を学びたいのでなくても、ひとつの文学の講義として充分に読むに値する。