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小説は何処から来て、何処へ往こうとするのか?普段、私たちがあたりまえのものとして受け止めている小説は、一体どのようにしてうまれたのか、そしてどのように変化してきたのか、本書において、ルカーチは小説の成立・発展の歴史を、歴史哲学的に解明していきます。
ルカーチによると、人間がまだ世界の一部として存在していた時代は、叙事詩という物語形式が存在するのみでした。しかし、人間に自我や内面が生じ、自我が自己の内なる深淵を知ったとき、世界と自我との間に決定的な溝が生じ、私たちは世界から追放されます。これが有名な「先験的な故郷喪失」であり、以後、私たちは自分の外にあるものよりも内面へと向かうようになり、近代独特の形式「小説」が生まれたということです。
こうして生まれた「小説」ですが、小説にはどのような運命が待っているのでしょうか?ルカーチは小説のたどる隘路を指摘しています。それはペシミズム・幻滅の弊害です。ルカーチは、「幻滅のロマン主義」という言い方をしますが、人間の内面が一層重要になるなかで、はじめから外界において敗北することを確信した幻滅的・絶望的な気分がうまれます。それにより、小説は救いがたいペシミズム・情緒へと解体され、漠然とした陶酔や、虚しさ、悲哀、冷笑、懐疑、といったものが、小説を支配するようになるということです。まるで現代の文学的状況の行き詰まりを予言していたかのような、驚くべき精確さの分析です。
ルカーチはマルクス主義の凋落の中で殆ど顧みられなくなりましたが、彼の思索には、忘れ去られてしまうのは余りに惜しいものがあります。本書もまさに古典の名にふさわしい名著であり、小説を深く考えたい方には是非ともおすすめしたい一冊です。
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