失恋した女性が平安時代にタイムトリップ。「源氏物語」を執筆する香子さまのために
モデルを探したり取材やインタビューをしたりする「小袖」という女房と入れ替わって
しまったらしく、そのお仕事も取りあえずやってみることに。これは夕顔の、
これは葵の上の、そしてこっちが末摘花のモデルね、と、わずかな古典の知識を
思い出しつつ取材をするうちに、末摘花は不細工、とか、六条御息所はシット深い、
とか、そういう情報はフィクションで、実際のモデルの女性たちはもっと生身の
女性として生きていたことを知り、自分の恋愛観についてもいろいろ考えることになる…
という、古き良き時代のコバルト文庫風の、古典をモチーフにしたSFエンタテイメント。
柴田さんらしく「末摘花は見たところ不細工じゃないのになぜ後世には凄くブスって
伝わっちゃったのか」とか「父の入道の言いなりで源氏の相手をした明石の君に
意志はなかったのか」とか、突っ込みどころ満載の源氏物語に対してユーモラスな
答を用意している。それぞれの女性の秘密の描写は、ミステリー作家としての柴田さんの
センスでなかなかどれも面白い。時間旅行もののお約束「主人公はもといた時代に
無事に戻れるのか?」「戻ったとして、トリップ前より幸せになったり成長してたり
するのか?」という点でも爽やかなエンディングになっていると思います。