いちばん遠い島々、それが小笠原。いまでも覚悟を決めて長い船旅に身をまかせる以外の行き方はありません。西表島ですら、気分的にも時間的にももっと近い。本書はその遠い、美しい島々への最高の手引きです。歴史について、住民について、動植物についての必須の基礎知識が、ていねいにまとめられています。言語学者のダニエル・ロングが編者であるだけに、「小笠原ことばミニ辞典」は非常に興味深いセクションでした。「ピーマカ」や「ダンプレン」といった料理もおもしろい。そしていまも歌いつがれるミクロネシア系の歌。歴史の記述には、なかなか凄惨なものもあります。1945年、「的場末勇少将と立花芳夫少将は撃ち落とされて捕虜となっていた米兵パイロット8人を処刑し、解体し、その肉を料理して宴会で食べた」。戦後、この件で両少将を含む5人が絞首刑になったそうですが、いやはや、めちゃくちゃな話です。立花は敗戦時の父島第109師団長だったそうですが、小笠原のこの日本軍の武装解除は同年8月18日、降伏の調印は9月3日。つまり本土で日本が降伏しても、戦争は終わってなかったんですね。考えてみたこともありませんでした。