東京物語を見ました。1952年。東京タワーもない時代。都電はあったようです。物干し台から煙がもくもくしている様子はやがて高度経済成長を迎える日本を象徴している様子。のどかな雰囲気を醸し出しながら、一方で忙しい個人の生活に追われる毎日。東京と尾道とは汽車で1日半かかる時代であり、クーラーもないので、常に団扇を片手にバタパタしている、異次元空間を見せられている気分になりました。しかしながら、現代に問いかけられる問題は変わらないような気がします。ある面での人のやさしさを再認識させてもらいましたが、一方で現実的な親子関係の面は非常にシニカルな結末であり、自分もある種心当たりがあるような厳しいパンチを浴びせられたようでした。ただ、原節子さんの美しさは非常に光ります。現代にはないゆったりとした会話は、不思議なリズム感、作品全体の雰囲気を作り出しています。
このような作品が後8枚も見れるとはものすごいことです。過去を見ているのではなく、違う世界を見ているようで、不思議な感覚に襲われました。現代でも小津作品が評価されるのは見て初めて分かりました。人間の感性の豊かさはまだまだ捨てたものではないと。