『
子連れ狼』『修羅雪姫』『
弐十手物語』など多くのヒット作品を手掛け、また高橋留美子『
うる星やつら』『犬夜叉』、原哲夫『
北斗の拳』、板垣恵介『
グラップラー刃牙』、堀井雄二『
ドラゴンクエスト』など多くの弟子を輩出してきた劇画村塾の塾長としての顔をもつ御年75歳を迎えた現在もなお現役の劇画原作者として第一線で活躍し続ける劇画界の巨匠・小池一夫!
前著『
人を惹きつける技術』では、これまでの漫画やアニメ、ゲーム、映画、小説などの“物語”メディア中心として構成され、テーマや作者のメッセージを伝え、背後に固有の物語や歴史を背負い、心や考えを持った存在としてとらえられていたキャラクター論について語られていたが、今日ではデジタルメディアの登場に伴い、デジタル技術の進歩によって、自分の手で創れなくてもソフトウェアの手を借りて、キャラクターを動かしたり、コンテンツを育成できるような時代になったことから(その象徴が本書の表紙をかざっている“初音ミク”である)従来のキャラクター原論を新装して立ち上げたのが『キャラクター新論』である。
ただ全体的には第3章における『ソーシャルメディアとキャラクターの世界』に関してのみが今回の“新論”に値する箇所であり、その他に関しては著者が以前から提唱していた箇所と重複する部分はあるものの、やはり客観的かつ論理的にわかりやすくキャラクター論を提唱する著者の教えは、改めて“表現者”のみならず生活を送るその他大勢の方にも相手の事を考える力を養う意味でも一読するに値すると思う。
また、今回本書とは別に特典として師匠・小池一夫氏と弟子である山口貴由氏『
シグルイ』、さくまあきら『
桃太郎伝説』との各対談映像のDVDが付属しており、本来ありふれた短い付録映像かと思えば、二人との対談で計2時間半収録されている従来にない膨大な長さの特典映像となっている。さらに両者とも見応えのある対談となっており、劇画村塾についての思い出や昨今出版会で話題に挙がっている東京都条例問題(本書にも記載)など語られており、映像から拝見しても小池氏が劇画村塾を作った経緯や氏の人を育てる喜びが言葉の端々から感じられた。
そして何よりも凄いのは75歳を過ぎても未だ衰えぬ創作意欲だろう。そのうえ現在でも常にキャラクターのことを考え続ける姿勢や今回の初音ミクに代表されるデジタル技術など新しいコンテンツ、また昨今流行している萌えキャラ(近年は『
魔法少女まどか☆マギカ』にご執心)に興味を示すなど常に積極的に新しい物に関心を持ち続ける姿勢は素晴らしく、小池氏ほどの巨匠であれば、自分が育ってきた環境に囚われ、なかなか新しい慣習には馴染めないまま固執される方が多いのであるが、古い慣習に囚われずに今はやりのイノベーションを常々昔から実行されている小池氏だからこそ、現在も第一線で活躍されるのであろう。
その意味でも本書を一読して是非小池氏のアイデンティティを堪能して頂きたいものである。