大正から昭和にかけて、京都のアール・デコという副題に相応しい作品を残した小林かいちの作品に魅せられています。
本書は、かいちの研究者や収集者、関係者が対談やエッセイで詳述しています。見て楽しい貴重な書籍でした。
小林かいちの絵ハガキが一部の熱狂的なマニアに愛されていたほかは、近年まで謎に包まれたデザイナーでした。その生涯については、島村元子さんのドキュメント「小林かいち」再発見物語に詳しく書かれています。展覧会が催され、京都新聞に取り上げられ、遺族が名乗り出たのが2008年2月のことです。そうして少しずつ謎のデザイナーの真の姿が浮かび上がってきました。
かいちの作品はシンプルなデザインなのに、哀愁を感じさせる作品が多いのが特徴です。どこか薄倖な女性のシルエットが大正ロマンというイメージを超えて、現代でも通用する質の高さを誇っています。儚くも切ない女性美を簡潔な筆遣いで表現する力量があるからこそ現代でも表紙を飾ったり、様々なカヴァーとして使用される所以でしょう。
眺めているだけで癒されますし、その抒情豊かな世界に引き込まれます。絵ハガキは基本的に4枚1組の連作になっています。起承転結のあるストーリーも感じられ、時代を超えて愛される普遍性を内在している作品群でした。
本書の内容です。
第1部 対談「小林かいち」の魅力を語る(モードへの熱い視線、グリッタリーなメランコリー ほか)、第2部 「かいちデザイン」7つの表情(蝶/花、愛のはじまり ほか)、第3部 「かいち」をめぐる「謎」を解く(小林かいち・三つの謎、小林かいちと「京都アール・デコ」 ほか)、資料(小林かいち「絵封筒」サイン一覧、ドキュメント「小林かいち」再発見物語 ほか)