本書は、2003年2月に同じ早川書房より上梓された短編集、四六判ハードカバー本の文庫化である。
文庫化に際して、新たな短篇や大きな加筆修正などは加えられていないようだ。
作者の神林長平は、短編よりも、どちらかといえば、連作長編や普通の長篇の印象の方が強いかもしれない。本書は連作ではないものの、全体になんとなく統一感のある、コンセプト・アルバムのような短編集。執筆順とは異なる配列や、書き下ろし作品「意識は蒸発する」が効いている。ある意味、もっとも神林らしい短編集といえるだろう。
ハードカバー版をお持ちでない神林長平ファンには、文句なしにお勧めできる。
ちなみに、解説は桜庭一樹。最近、ライトノベル以外にも進出している気鋭の作家だが、あちこちで神林ファンであることを公言している人だけに、熱く語っている。桜庭一樹ファンは、解説だけでも立ち読みでいいから目を通しておいた方がよいと思う。