はやぶさくんのカプセルの中に、数十個の微粒子が入っていたことがわかった!(まだイトカワのものかどうかは不明だけど)……というところまで事態が進展した時に書かれた本です。
少し前に出版された『
小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡』と、内容はかなり重なります。
『〜奇跡』のほうが、はやぶさくん帰還の感動まっただなかで、筆者のたかぶった気持ちが反映された文章なのに対し、今回の『〜物語』は、少し冷静になったところで、はやぶさくんの偉業をあらためて、誕生に至るまでの部分から振り返った印象です。
なんといっても的川氏は、はやぶさ誕生から帰還までを当事者としてご覧になっていた方ですから、その言葉には一語一句、現実感と重みがあり、大変興味深い物語が語られます。
プロジェクトマネージャー・川口氏の人となりや、チームの雰囲気が、生き生きと浮かび上がります。
はやぶさくんは宇宙開発としては少ない予算で、米国もビックリの欲張りな目標がたくさん詰め込まれましたが、それがいい方向に働いたことが読み取れます。「適度に貧乏」だったことが、ベンチャー企業のように参加者誰もが全力で工夫を凝らし、素晴らしい成果をあげることができた理由のようです。
この本で一番いいと思ったのは、ただ感動して泣いて終わらずに、最終章で「はやぶさの存在は私たちにとって何だったのか」をきちんと検証しようと試みていることです。
なぜ、私たちはこれほどまでにはやぶさに感動するのか。なぜ、はやぶさというプロジェクトは日本の希望たりえるのか。なぜ、はやぶさ2号機が必要で、日本の技術はこれからどうあるべきなのか。
理系・文系の枠を超え、すべての日本人にとってインプリケーションが本当に大きいプロジェクトだったんだなぁ……と、あらためて、はやぶさくんの偉業に感動しました。
ただ、はやぶさファンとしては『〜奇跡』と両方読むと楽しさが膨らみますが、それほどでもない方は『〜奇跡』か『〜物語』かどちらか1冊でいいかなぁ。内容が整理されているのは、どちらかといえばこの『〜物語』のほうです。