まず、1週間で、しかも激務の合間を縫って本書を書き上げられたことに敬服。
本書は、続々と発行される『はやぶさ』関連書籍の中では珍しく、100%プロジェクト内部の技術(工学)者の手による著書となっております。
著述が本業の方ではないので、ジャーナリストやドキュメンタリー作家のように、ドラマチックな、或いは門外漢の素人にも分かりやすい、とは必ずしも行きませんが、科学的・技術的には多少の心得があれば分かる程度の内容に抑えられておりますし、内部の人間ならではのエピソードなどもあります。
著者の人柄が伺える、要点を押さえて淡々とした、しかし随所に科学技術の発展に賭ける強い情熱やヒューマンな茶目っ気がちりばめられた力作です。
最初、もっと技術報告的なものや、或いは逆に内部関係者の立場で事実を主観的に綴ったものなのかと想像していましたが、丁度その中間と言った感じでした。
ストーリー性・ドラマ性・詳細さについては他に譲ることになると思います。そこら辺は、報告書や論文の作成が本業の人と、一般向けの文章を著す人の違いで、仕方無いものと思います。むしろ、その割に(これは川口プロジェクトマネージャーについても感じたことですが)抑え目の、しかし感情の篭った文章に深く胸打たれるものを感じました;特に、まえがきとあとがきは、プロジェクト全体を総括する著者の深い感慨が強く反映されていると感じました。
既に山根一眞氏の『〜はやぶさの大冒険』を読んだ私ですが、各事象に対するプロジェクト内部の技術者の受け止め方・捉え方が外野のそれとやや異なる部分があることも分かり、関係者ならではのエピソード共々楽しめました。
他の書を既にお読みの方も、是非一度本書を手に取ってみて戴きたい。そして、技術者の生の声に是非触れてみて戴きたい。そうすることによって、科学技術振興の在り方、次代育成の在り方について改めて考えを深めて戴ければ、と思います。
余談ですが、字が若干大きめですので、弱視・老眼の方でも(他の書よりは)多少読みやすいかと。