2000年初出のものから語り下ろしのものまで、9人との対話集。
その中では佐野元春と江夏豊との対話が抜群に面白い。あこがれの人を前にして著者のはやる心が対話をはずませる。しかし、単にファンとしてはしゃいでいるのではなく、佐野元春との対話では創作の神秘、江夏豊との対話では記憶(江夏自身の試合の記憶とラジオで野球の試合中継を楽しんだ著者の記憶)が語られて興味深い。
同業の文筆家との対話では、著者がかしこまったり、私が読んだことがない本の内容に関する話になるものはさほど面白さを感じない。しかし、詩人・清水哲男との対話は野球や数学の話が主で、「博士の愛した数式」の色々な仕掛けと読み方を知ることができ、同著の大ファンとしては大いに啓発された。
その他、五木寛之とは宗教・文学が手を伸ばすべき精神領域を巡る対話となり、著者の育った環境が養った宗教観の一端に触れられる。岸本佐知子とは同世代の同姓との楽しいおしゃべり。
野球と佐野元春の音楽と数学の美をこよなく愛する著者の素顔を知ることができる本だ。