小生の書架の小室直樹博士全著作に、並んで収められている本作の旧版。
博士の追悼として20年ぶりに新装された本書は、橋爪・副島両氏の師に対する深い敬愛が感じられる対談が増補されおり、小室博士の「学問と思想」に加え「人間・小室直樹」の魅力が十全に伝わる編集になっている。
温厚でダンディな橋爪氏と鋭利でラディカルな副島氏という組み合わせが、まず面白い。ここに韜晦癖の宮台氏を加えたお三方が、世間にも知られた小室博士の高弟であろうか。
311以降、学者の真贋がネットを通して白日の下に晒されている。
確かに原発村のデタラメこと斑目原安委員長と京大原子炉実験所助手小出氏の対比は大衆にもわかりやすい、アカデミズムの「中心と周縁」の構図だ。
時の政権でさえ手足を出せない強大なこの「ムラ社会」こそ、小室直樹がエキセントリックに見えるほど田中角榮擁護論でロックオンしたターゲット「東大法学部」であった。
30年後の現在も高弟・副島隆彦は師の教えを守り小沢一郎擁護論を展開中だ。小室博士は良い弟子を持った。以って瞑すべし、とはこのことか。
小室直樹の学問と思想のエッセンスは、橋爪氏が記した「まえがき」が正鵠を得ているだろう。
「預言者は、故郷に入れられないという。だから小室博士は、時代はそのうち私に追いついてくる、と達観した。時代が追いついたとき、小室博士はもういない。小室直樹の不在は、博士の知性を正しく遇することをしなかった、私たちの咎である。(中略)学者は究極のところどういう存在か。生まれついた自分の頭脳を、自分のためでなく、公共のために用いる人だと思う。小室博士ほど、自分の頭脳を公共のために、使い切った人はいない」(まえがきより無断転載)
法学・人類学・経済学・心理学・社会学。宗教学の上位概念である「社会科学」の面白さと深さを教えて下った小室直樹先生の生前の薫陶を惜しみつつ、合掌。