小学校からキャリア教育が必要なのか?
そういった疑問が口にされることは多い。
では、キャリア教育とは何なのか、何のためのキャリア教育か。
そういった問を無視して旧来の進学指導・就職指導の枠組みで考えていくその意義や目的を捉えることはできないだろう。
本書の冒頭でも協調されているのがキャリア教育の意義や定義、提唱された背景や経緯などである。
「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」
そうキャリア教育が定義づけられている。トートロジーの部分はひとまずおいておこう。
社会情勢の変化、社会や家庭の教育力の衰退(もしくは変容)に伴い、昔のように近所との大人や親戚などの姿を見て、働くことや自立することを体験的・経験的に学ぶ機会は極端に減ってしまった。学校教育以後の社会につないでいくためには学校において自立に向けての基盤を育成する必要があるのだ(こういう現状を嘆くのは簡単だが、現実問題学校が取り組まないと格差が拡大してしまうのが現状であろう。キャリア教育をすべきか、学校以外がすべきではないのかという問題はここでは問わない)。
「社会的・職業的自立」が目標であるので、従前のような進学指導・就職指導だけでは目標は達成できない。
中学校や高校になってから取り組むというものでもない。外部講師の講話や職場体験だけでも難しいだろう。
また最も警戒されていることであるが、新しい実践を必ずとも必要としない(本書の中でも再三強調されている)。
教科や特別活動の内容をいかにキャリア教育の目標にあわせて再定義しなおすことが重要なのである。
これまでの内容をキャリア教育の目標にあわせて見直し、新たな意味づけをしていくことがキャリア教育の視点なのである。
本書は小学校段階のキャリア教育の手引きなので「基盤の育成」に重点を置いて記述がなされている。
実践例は最後にまとめられているし、指導案中心で実際の児童の反応や教示についてはほとんど述べられていない。中心となっているのはキャリア教育の意義、学校教育計画の編成、外部機関との連携といった学校組織としての取り組みにかかわる部分である。
内容としては直接実践に役立つものと言うよりは、学校においてキャリア教育計画や教育課程編成で参考にすべきものと言えよう(文科省編集ですし)。