私が購入したのは平成十五年に刷られた物で、
こちらは表紙・袖に映画の小公女の写真が使われていて、デザインもなかなか素敵です。
父の元を離れ、薄暗いロンドンの寄宿舎に入ったサアラは不思議に魅力的で、
誰からも好かれる少女でした。(意地悪なミンチン先生を除いて)
あらゆる面で恵まれていた彼女でしたが、突然の父の死から彼女の周りの全てが一変します。
それは心にとっても体にとっても貧しくつらいものです。
変わらないのは彼女と、彼女の夢見る力だけ。
いつも父に愛された時のように、公女のように凛とふるまう少女が、
「ベッキイはときどきお腹があまりすくので、塵箱からパンの皮をひろって食べているんだわ!」
と堪らずむせび泣く場面の痛々しさといったらないです。
本来夢見がちとは子供らしい特性でありながら、弱々しくあまり褒めるべきではないものとして扱われます。
しかしサアラの夢見る力は、現実をねじ伏せる力です。己を己として貫き通す為に行使されるのです。
人生は巡り合わせと言いますが、サアラはこの力で己をギリギリで失わずにいた事で、それを引き寄せます。
そうしてようやく物語は灯りを見つけるのです。
まるっきり子供向けのように思われているこの有名な物語が、大人にも不思議に魅力を放つのは、
彼女が大人にさえ難しい事をやり遂げているからではないかと私は思います。
それは他人の為に怒る事、そしてさらにその怒りを抑えるという事です。