全体を通して読み取れるのは、「学習する経営者」小倉の謙虚さと、そこからは想像もできないほど強い決断力である。成功した人物にありがちな自慢話ではない。何から発想のヒントを得たか、誰からもらったアイデアか、などがこと細かに記されている。講演会やセミナー、書籍、マンハッタンで見た光景、海外の業者に聞いた話、クロネコマークの由来…。豊富なエピソードから伝わってくるのは、まさに学習し続ける男の偉大さである。
一方で、並々ならぬ決断力を持っていたのだと思わせる記述がいくつかある。宅急便に注力するため、大口の取引先であった松下電器との長期にわたる取引関係を終結させたこと、三越岡田社長のやり方に反発し、「とてもパートナーとして一緒に仕事をしていくことはできなかった」として取引関係を解消したこと、運輸省を相手に訴訟を起こしたこと…。いずれも確固たる論理がその根底にあった。それにしても見事な決断力と言わざるを得ない。
終わりの部分で紹介されている宅急便の各種サービス内容や、有名なNEKOシステムなどの話は、流通・物流の関係者以外には興味がわかないかもしれないが、全体的に読みやすく、興味深いエピソードが満載なので、読んでいて飽きることがない。経営者としての小倉の人となりが伝わる、好感の持てる1冊である。(土井英司)
今,ベンチャーの時代といわれ,各種の起業講座が花盛りだが,成否のカギを握るのは結局,人である。その意味で,全編からほとばし出る情熱が,事業をなし遂げる人間とはいかなる人か,を教えてくれて大いに参考になる。「経営リーダー10の条件」の一つに「時代の風を読む」ことをあげ,これからはボーダーレスの時代に対応する心構えが必要だと説く。そこからどんな事業構想を描き,具体化するかは読者への宿題であろう。
(静岡産業大学 経営学部 教授 小山 博之)
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43 人中、41人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
宅急便サービスの革命,
By Jabb (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 小倉昌男 経営学 (単行本)
どの業界においても、革命を起こした方は素晴らしいと思います。私の周囲には、小倉氏を評価する方がとても多いようで。私は人に薦められて本書を手に取りました。読みかけの状態ながらも「あの著書はいいですね!」と興奮して周囲に言っていたら、「何をいまさら・・」という表情をされながらも、「そうでしょう。ああいう人が流通を変えてきたんだよ」と相手から更なる熱弁を振るわれたりすることもありました。このときは軽くショックを受けました。小倉さんの功績はコンセンサスを得ていて、ビジネスの世界で常識なのかと。私の無知と、属する環境もありますが・・。今のまだ未熟な状態でこの本を紹介されて良かったと思います。今後の糧に充分に活用したいと思います。 本著は、とてもシンプルにまとめられた「経営実践禄」です。私に本著を薦めてくださった方は、「第15章の7」を念頭に置かれていたのだと思います。私の職種を考慮したうえで、会社とトップの露出についての示唆をいただきました。「第15章の7」は私の課題そのものを突いていたので、改めて自分の職種を極めようと思いました。 トップの大胆な決断が会社組織を変えていくドラマチックな状態を、渦中にいたはずなのに客観的に観ている視点に感心します。社会的にスゴイことをしているのにも関わらず、小倉氏の語りは実直で余分な修飾語がなく、淡々と筋を語っていきます。人間は自分の功績を誇張してしまうのに、この方の謙虚さには脱帽です。 本当にシンプルな経営書です。企業として、第一に「生活者に何を提供することができるのか」という観点に立っていて、はっとさせられることが沢山です。生活者が望むことに応えるサービスの提供に、ひたすら応える姿勢は素晴らしい。経営者としても、世襲でありながらも引き際の鮮やかさが印象的です。 以下、私自身の体験を交えての感想を・・ 始めの方に述べられていますが、私の実家はヤマト運輸の「取次店制度」の恩恵を受けていました。だから、思い入れのあるシステムなのです、クロネコヤマトさんは。過疎地で取次店の業務拡大をするのが遅かった地域だと思いますが、毎日毎日、おおよそ決まった時間にヤマトのセールスドライバーさんが集荷に来てくださいました。幼い頃に店番をしていて、荷物が毎日あるわけでもないのに、毎日来てくれるのか不思議で仕方がありませんでした。とてもサワヤカなSDさんだったのですが、彼の仕事が腑に落ちませんでした。私が、利益というものについて、ぼんやりと疑問を持った初めての事例だったのです。「毎日、1日2回も巡回してて、無駄じゃないの?」と思いました。 一方、荷物を持ち込んだ近所の方が「○○に住む息子(娘)に、米を送ってあげるのよ〜」「今年はたくさん山菜が採れたからね〜」などと話し込んでいくのを見聞きしていると、宅配便は家族の繋がりを担うものなんだなぁと感じていました。過疎地にとって翌日配達の宅配便は、とても大切なものだったのです。田舎の人間にとっては、娯楽施設もなく、子どもなどの家族のことを考えるのが一番の楽しみでした。あの頃は、テレビチャンネルも少なくて、ネットもなかったですし。 私自身も、田舎を出てからずいぶん宅急便のお世話になりました。ありがたかったなあ。 ・・などということを思いながら本書を読むと「小倉昌男さん、ありがとう!」という気持ちでいっぱいになります。過疎地にこれほどのインフラを作り上げるのは、やっぱり並大抵ではなかったと思います。個人宅配サービスに賭ける小倉さんの決意が伝わってきて感激です。今では、あの地域において「クロネコヤマト」はなくてはならないサービスになっています。
35 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
感動的です。,
By サラリーマン太陽 (横浜市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 小倉昌男 経営学 (単行本)
この手の経営に関する本を読んで、『面白い』とか『学べた』と思ったことはありましたが、感動したのは初めてです。本書に込められたメッセージは非常に解りやすくて、本質的な正論は難解ではなくシンプルなのだと再認識しました。世の中で間違っているようでまかり通っている事はいくつもあると思いますが、間違いは間違い、正しい事こそ正しいのだと安堵感を覚えます。 思わずヤマト運輸に転職したくなりますので、上司と喧嘩した日は読まない方がいいかもしれません。
8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
宅急便ができるまでお茶は飲まない!,
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レビュー対象商品: 小倉昌男 経営学 (単行本)
めちゃくちゃ面白い宅急便の本。宅急便・宅配便が無かった頃にものを送ろうとすればそれは郵便に頼るしかありませんでした。ゼロからそれを作り上げるのはいかに大変で、かつ独創的な試みなのか教えてくれます。 とにかく人物も行動も面白い。小倉さんが亡くなったときにメディアの一部では「規制緩和に立ち向かった先駆け」のようなことを言ってましたが、それは曲解だ。規制緩和が叫ばれていて、それが目的であるかのように考える人もいるかもしれないが、そうではない。宅急便のシステムを完成させたいから結果として、規制にぶつかったのであって、はじめにキセイカンワありきではない。 黒字になるまでお茶を飲まない、といった一徹な姿勢から抜群の行動力までを、こんなに楽しすぎていいのかというくらいの面白さで描いている。 この本を埋もれさせるには、ちょっと惜しいと素人が思ってしまうような本です。
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