「陸奥話記」(前九年の役)を読むために、購入。より名高い、「保元の乱」「平治物語」「将門記」より、簡潔で直截な表現の「陸奥話記」が一番、現代の読者にはなじむと思う。表現も概ね誇張がなく、非常にリアリティがある。安倍氏側の種々の発言が、源氏側(朝廷側)から書いているにもかかわらず、切実な表現が多く、どちらに非があるのかは読めばわかる。残虐な侵略者に対する悲劇として読める。全体に合戦の規模が小さいが、それだけに、およそ当時の実際を髣髴とさせる。これにくらべると、「保元・平治」は、誇張が大きく、なんとなく馬鹿らしいのと、いまにすれば、脚色が行き過ぎた平安文学特有の退屈さがある「平家物語」に通じる退屈さがあった。「将門記」はやはりおもしろいが、将門の内心しまったと思いつつ、強がりを言いながら論旨のわからぬ関白への手紙の内容など、却って悲惨な感じがする。これも「陸奥話記」同様、当時を色濃く反映している戦記物で興味深い。