古今東西、鉄道はその国の歴史や性格を知り、見聞を広めるにあたり有力な手段であるが、本書は鉄道を通して北朝鮮を詳しく紹介した力作だ。
鉄道路線や時刻表、車両について精力的に調べてあり、それは取材に当たって「身の危険はなかったのか?」と読者が心配になるほど詳細だ。著者は世界各国を旅行し、恐らくその体験で養われた独自の嗅覚を武器に北朝鮮の鉄道と上手におつきあいされたのだろう。
本書は鉄道を紹介するのみにとどまらず、北朝鮮の実際の政治や人民苦難の生活などナマの情報をふんだんに提供してくれる。たとえば鉄道員の月給は最高120円、日本人の四日間の北朝鮮鉄道旅行が最低12万円。その差なんと1000倍である。軍事的機密組織である鉄道を、外貨獲得のための苦肉の策としてその一部を外国人に開放しなくてはならないほど経済は疲弊しているのだ。
独裁者に富が集中する一方、巷では闇取引や賄賂が横行し、人民は塗炭の苦しみにあえいでいる現実。巨大な貧富の差、あまりの格差社会を見せつけられる思いがするが、本書はそういったこの国の末期的状況まで教えてくれている。