将棋は、世界でいちばん複雑な盤上対局ゲームである。
チェスでは、スーパーコンピュータが人間のチャンピオンに勝てるようになった。
しかし将棋は、「取った駒を手駒として使える」という破天荒なルールにより、その複雑さはチェスの比ではなく、コンピュータはまだまだ人間の名人には勝てないでいる。
極めて面白いゲームであるにもかかわらず、他国に同じものがないのをかねがね不思議に思っていた。囲碁は、韓中と共通しているのに!
本書を読んで将棋のルーツがかなり分かった。「同じもの」はないが、「似たもの」は世界中にたくさんあるのである。どうやらインドで発祥したゲームが、インドシナを経て黒潮交流圏によって日本に到来したものらしい。日本での将棋はそれから千年以上の歴史を閲しているという。そして「手駒」ルールこそは日本で独自に付け加えられたものらしい。
本書はそういう学術的にも意味のある論考が本書で述べられているのだが、読んで楽しいのは著者が将棋(に似たゲーム)を介して各国の「(それぞれの国の)将棋ファン」と交流する様子である。ルールや駒の形は違っても、勝負に熱中する「将棋好き」のビヘイビアは驚くほど万国共通なのだ。各国における歓待ぶりと将棋を通じた交流の様子は実に楽しげであり、かつ「お国ぶり」が顕著に表れていて、読んでいて誠に面白かった。