「アダルトチルドレン」を世に知らしめ,児童虐待の臨床活動にも従事する著者は虐待犠牲者達がいかによみがえった記憶を受け容れるかを事例を通して報告する。一方,虐待犠牲者や性的被害者の「虐待を受けたという過去の記憶」は,ねつ造されることが多いと非難する社会一般に対し,サバイバー(犠牲者)の語りやレイプされた女性の声を真剣に受け容れるよう,強く促している。
サバイバーの治療は,「グリーフワーク(悲嘆の仕事)」といってトラウマ体験を何人かの前で自らが話したりまた他人の話を聞くというシェアリング(分かち合い)の作業によって行なう。人間には驚くべき可塑能力が備わっており,著者の斎藤学氏はサバイバー自身の自覚されていない能力に気づかせ,過去の(記憶の)組み替えをサバイバー自身ができるように導くことこそ治療者の仕事であると述べる。犠牲者たちは最初の他者であり絶対的信頼感を置く「母」の記憶を受け容れ,それを乗り越え,「自己物語」を形成し「叫び」が自身の中で消化される。著者の犠牲者への温かなまなざしが感じられる1冊である。 (ブックレビュー社)
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