ゾウリムシ研究のスペシャリストの作品である。
寿命は真核生物の時代になって初めて出現した。
つまり、原核生物は不死であった。今もそうだが。この地球上での生物史全36億年の半分は不死の生命だけの世界だった訳だ。そして、16〜20億年前、真核生物が誕生しそれに伴って寿命も現われた。つまり、生命体は進化に伴って不死性を放棄したのである。不死性の放棄と見合うだけの、即ちトレードオフに値するだけのものを生命体は得たのか。それは一体何なのか?現在の定説では『不死性の放棄とトレードオフの結果、生物は遺伝的多様性を獲得した』である。環境の変化に対応する方策を手法に入れたと。筆者はこの定説に真っ向から異論を投げ掛ける。筆者の仮説は明快である。寿命、有性生殖の本来の意味は、遺伝的多様性を生み出す事などではなく、新しい自己をつくり、親世代とは異なる一生を歩ませる事にある。寿命とは『若返りによる新しい一生の再出発(Epigenetic Codeの解除・初期化)』なのだそうだ。成る程、説得力有りますな。
「生命システムは活動の促進と抑制のバランスである。」
そう言いながら、筆者は抑制系を殊更強調する。
・「生物の進化は細胞の持っている可能性を100%発揮させないように抑制を掛けてきた歴史である。」
・ 「進化するとは抑制系が進化するという事。」
だから抑制系が壊れると寿命が延びたりもする(線虫daf−2変異個体がよい例)。
生殖と寿命。永遠のテーマである。
「生殖活動がひと段落した中年以降、CRに何の不都合な事があろうか。」
井村先生のお言葉を思い出す。子作り・生殖が済んだら、個体(自分)の寿命延長に注力する小生で御座る(笑)。
併せて読みたい本は「Power,Sex,Suicide」(訳本は『ミトコンドリアが進化を決めた』)。2005年の英国Book of the Yearである。
エネルギープラントも有性生殖も、寿命もミトコンドリアが持ち込んだ。ミトコンドリアとの関係にもう少し具体的に触れて頂ければ更に嬉しかったので、星は4つ。
生命論、老化、寿命に興味のある方、皆様にお勧め出来ますが、専門用語に溢れておりますよ。どうぞじっくりと。