この下巻ではフロイトのハンスの症例が大きく内容を占める。
しかし、そういうことであればフロイトの論文がすでにあるので、それと照らし合わせて理解することが可能なので、ラカンのセミネールとしては理解しやすい部類に入ると言える。
「対象a」「象徴界」「想像界」「現実界」といった、ラカンの基本概念もここでは本格的に出てきて、それらの概念を理解するにもちょうど良いのだが、やはり、気になるのはラカンの「舌好調」ぶりだろう。話が錯綜する場面が多々あり、それが読者には非常に読み辛い。
もし、「頁ごとに内容を解りやすく噛み砕いて記述しなおせ」という指示が出た場合、それを行なうことは極めて困難だろう。
基本的な概念について説明している初期のセミネールなのに変ではないか?と思われるかもしれないが、それがラカンである。
ラカンはその場で思いついたことを急に話を中断して語りだす…かと思えば、また違う話をする、というようなことが「1頁」の中で生じるので、話が見えなくなってしまう人は決して少なくはないはずであろう。
であるから、ラカンの話し方のリズムに慣れる以外に方法はないのだが、それがこの本でできれば、以降のセミネールを読むのにうんと楽になることだろう。
読者も読み上手というより、聞き上手を得とくして、できるだけラカンのリズムに合わせられればいいのだが。
ちなみに、それ以外の読解注意点は『対象関係・上』の方に書いたのでご参照いただければ幸いです。