「『木を植えた男』は、今から60年前に原著者であるジャン・ジオノ自身がフランスの荒れ地を歩き、現場からの感じたことをリアルなドキュメンタリーのようにまとめたものです。作中に出てくるこの一人の羊飼いは様々な失敗を繰り返しながらも生涯をかけて、破壊された土地に森を回復します。人々が愚かな戦争を繰り返している間にも、一人で黙々と木を植え、ついに森と共生する豊かな田園景観を創出しました。
この素晴らしい物語は今世界中で翻訳され、日本語版も数多く出されています。しかし、日本語に訳した場合、原著の細かいニュアンスは伝わりにくいものです。国民性や地域性、文化の違いもあります。フランス語と日本語の対訳でじっくりと味わうという第三書房での試みは素晴らしい。訳者たちの努力によって見事に原著以上に心に響く夢のある物語として纏められています。
ぜひ本書を手にとって、著者ジャン・ジオノが発信している《人間は孤独である。しかし何が幸福か。それは今生きていること。今すぐ足元からできることをくじけないで続けてやる。それが最も未来志向のまちがいのない哲学と感性と持続力である》ことを読み取っていただきたい。
横浜国立大学名誉教授
(財)地球環境戦略研究機関 国際生態学センター長
宮脇 昭」(引用終わり)
本書のもうひとつの特色は、フランスの名優ジャック・ボナフェによる全文朗読CDが付属していることです。収録時間は約26分。製作はフランスのガリマール社。ノーマルスピードですが、フランス語の響きにじっくりと耳を傾けて、物語を味わいながら、「聞き取り」や「音読」の練習に役立ててください。
▼朗読者紹介
Jacques BONNAFFE(ジャック・ボナフェ)
俳優。1958年 6月 22日、北フランスのドゥエーに生まれる。
主な出演作品:『カルメンという名の女』(1983)、『C階段』(1985)、『イザベルの誘惑』(1985)、『ジャンヌと素敵な男の子』(1997)、『恋ごころ』(2000)、『恋は足手まとい』(2004)、『譜めくりの女』(2005)、『マルセイユの決着』(2007) など。
■「はじめに(本書の使い方)」より:
『木を植えた男』は、南仏の作家ジャン・ジオノ(1895-1970, p.131 参照)によって1953年に執筆された中編小説です。1987年、カナダでフレデリック・バック(1924-)によってアニメーション化されると、世界中に知られるようになり、我が国でも広く読まれて今日にいたっています。
その感動的な物語をぜひ原文で味わってほしいというのが、この対訳本刊行の意図です。ところが本作は絵本でも刊行されているとはいえ、決して子ども向けの易しい文章というわけではありません。特に、導入部として書かれた序文(p.4)にあたるところは、哲学的といってよいほど含蓄のある難しい文章です。
この最初の部分は、偉大な魂への尊敬で結ばれる最終ページと呼応してもいます。そこで、おすすめしたいのは、「およそ四十年前、...」(p.8)という語り手の回想で始まるところからまずお読みになることです。そして物語を読み終わってから、ふたたび初めにもどって、無欲の思想を語る冒頭部分を、ゆっくりと味わっていただきたいと思います。
本書は、第三書房「対訳 フランス語で読もう」シリーズの一冊めとして出された『星の王子さま』(訳注・小島俊明)の企図を引きつぎ、「対訳」(p.4-p.62)の後に中・上級レベル向けの「注解」(p.63-p.105)をつけ、さらに「訳し方の手引き」(p.107-p.112)および「フランス語文法のおさらい」(p.113-p.130)を完備しました。
また、原文中の「*」は語学上の注解のある印で、「クローバーマーク」は文学上の解釈を助ける解説の印です。味読の補いとなれば幸いです。
さらに、グラサウアによる数々の挿絵のほかにも、舞台となった南仏の「地図」(p.66)、内容を見やすく整理した「年表」(p.106)が、楽しみながらの理解をささえてくれるはずです。
では、いっしょに物語の扉を開けましょう----Il y a environ une quarantaine d'annees...
▼姉妹書
『対訳 フランス語で読もう「星の王子さま」』
『朗読CD フランス語で聴こう「星の王子さま」』
『対訳 英語で読もう「星の王子さま」』
【ミニ情報】
「木を植えた男/フレデリック・バック展」
2011年7月2日-10月2日、東京都現代美術館
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