と学会会長、山本弘氏の短編SF小説。ホラー・サスペンス仕立ての内容が多い。SFファン以外でなくても容易に読むことができると思われる。
本書の特徴は(著者の作品全般に言えるかもしれないが)、まず最初の2-3ページの間に急な非日常的展開に包まれるために、一気に話に引き込まれるとともに、早く結末を知りたいという衝動に駆られることだと思う。文章が読みやすく、無駄がないこともあって、一冊をあっという間に読み終えた。展開が速く、徐々に謎が解けていく面白さもあって、途中で飽きることはない。また、極限に追い込まれた登場人物の哲学的思考などは、後の作品である『アイの物語』に通じるものがある。心理描写に共感できる部分が多く、表現も上手い。登場人物2人の心理状態をそれぞれ1人称で綴った話などは、映像化するよりも、小説で読むことの醍醐味を感じる。
先に氏の集大成である『アイの物語』を読んでしまったために、面白さはやや劣っていると感じてしまったが、SF小説というカテゴリーにとらわれない面白さがある。少し甘めかもしれないが星4つの評価。