澄子、民江、貞子、妙子という四人の少女が、様々な芸妓としての道を辿るオムニバス形式の小説だ。宮尾登美子の一連の自伝作「櫂」→「朱夏」→「春燈」→「仁淀川」には、芸妓娼妓紹介業として富田岩伍が、その娘として綾子が登場する。
本作では澄子達四人を抱える芸妓子方屋「松崎」とその娘悦子がそれに相当するらしい。四人の芸妓達は、戦中戦後のただでさえ大変な時期に、途中公娼制度の廃止にも遭遇する激変の中、それぞれたくましく生きてゆく様が描かれている。
当時の花柳界の詳細な調査によるであろう数々の描写は、その時代に生きているかのような感を抱いた。特に無学で貧しい民江が、子供を売ったひどい父親を恨むどころか、一生懸命尽くす様には、最初はなんでそこまでと思っていたが、読み進むうち肯けて来るのは作者の力であろう。本作は「櫂」と「朱夏」の中間に発表されている。