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富士 (中公文庫)
 
 

富士 (中公文庫) [文庫]

武田 泰淳
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 638ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1973/01)
  • ISBN-10: 4122000211
  • ISBN-13: 978-4122000216
  • 発売日: 1973/01
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 207,584位 (本のベストセラーを見る)
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18 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By taKa
形式:文庫
精神病患者の多くは自分のことを「正常だ」、と強く主張するという。仮にあなたが間違
って精神病院に搬送されたとして、医師に「私は正常です」と言ったところで、果たして
信用してもらえるだろうか。

この小説は戦時下における精神病院という特殊な環境を舞台に、正常者と精神病者を分け
る境目とは何なのかを問う。「普通」や「正常」に対する絶対的、かつ客観的基準など到
底望むべくもないが、それでも何とかそれを掴もうと煩悶する主人公の姿は真摯で、どこ
か滑稽だ。

細部まで丁寧に描きこまれており、臨場感溢れる文体は見事。また、戦時中の精神病院と
いういかにも暗そうな舞台設定だが、内容はむしろあっけかんとしており、かなり笑える
場面もあるので、「重そう」と二の足を踏んでいる方は心配無用である。

ページ数の多さやテーマに物怖じせずに、是非とも手に取ってもらいたい。楽しく読めて
唸らされる、お勧めの一冊。

このレビューは参考になりましたか?
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
漱石や鴎外はともあれ、遡って紫式部などと言い出すと、留保をつけずにはおられないが、近現代文学で最も偉い作品といえば本書『富士』に止めをさすのではあるまいか。吉本隆明は漱石、鴎外が一番と述べていたが。

とにかく圧倒的な力量であり、これに比肩するのは大西巨人『神聖喜劇』、森敦『われ逝くもののごとく』か? 
この2作と較べても、阿部和重の『シンセミア』や『ピストルズ』、保坂和志『カンバセーション・ピース』は随分軽量級だ。奥泉光の『神器』はなかなかの歯ごたえのある作品だった。

最近、高橋和巳『悲の器』や北杜夫『楡家の人びと』を再読してみたが、いずれも力作、傑作であることは間違いないものの(特に『楡家』)、『富士』にはおそらく遠く及ばない。好みの問題も否定しないが。
別に優劣をつける必要もないが、第二次世界大戦を背景に、正常と異常の二項概念を図式的でなく、細部まで彫琢しつつ巨大な物語として構想・具現化できる力は超絶的と言うしかない。現代日本文学のドストエフスキーは、埴谷雄高ではなく、大江健三郎ではなおさらなく、埴谷の友人でもあった武田泰淳その人に他ならない。

武田夫人の『富士日記』ともども、必読の傑作である。

ちょっとまとまった休みを取る予定だが、この機に確か3回目になる“『富士』登山”をしようと思う
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13 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
豊穣な世界 2005/7/18
形式:文庫
武田が描く精神病院にでてくる患者は
架空なものであるがゆえになぜか底でわれわれと
似通ったものがある。
われわれの奥底にあるさまざまな欲動を
いろいろな形で極限化しているものばかり。
だから親近感があり、そしていろいろなことを教える。
人物ひとりひとりを見ていくだけでも面白いのに加え
異常者たちを抑えようとして崩壊してしまう
精神病院という全体の流れもあり、息のむ暇も無く
一気に読み進めてしまう。
最終章の落ち着いた武田の語りは
何度読んだかしらない。
いかにして生きるべきか。
重い思索、読んでいいようのない
充実感を感じる。
人生の中でもっとも愛する書物のなかの
一冊である。
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