初代のカローラと言われても思い出せない人が、スバル1000と聞いて「あ、後ろの席の床が平らだった」と言ったというエピソードがある。スバルの歴史というのは斯様なものなのだろう。
1994年に富士重工業が非売品としてディーラー各拠点や関係者に配布した『スバルを生んだ技術者たち』を商業出版したもの。「てんとう虫」こと360誕生から生産終了まで、そもそもは派生車種だったサンバーの開発、初の本格的FF乗用車スバル1000開発史、計画や試作だけで消えていった車たち……元が社内報の延長のような本だったため、時には「これ、今の労務管理だったら絶対ムリ!」と思うような話(残業手当がカツ丼だったとか)や、最後には社員・関係者に向けたシュプレッヒコールのような文章まで載っていて、それこそ「プロジェクトX」なんぞ消し飛んでしまうような面白さで読ませてくれる。宮城スバルのメカニックたちが試作したスバル1000改造の初の4WD車、作ってエンジンかけてみたら……何が起きたかは読んでからのお楽しみ。
ただ、原著のあとがき(これも収録されている)にも「今後まとめなければならない」とあるワゴンや高性能4WD、ラリー関係など「その後の10年」的な記載は皆無なのが残念。せっかく改めて出版したのであるからその辺りも含めた改訂新版になってくれていたら……というのが10年前に元本を読んだ人間としての正直な感想なので、渋めの評価で☆4つ。