20代前半で「頂点」を極めてしまった著者が、記者会見で「さあ、次は何をしますか?」と聞かれ、「清掃登山をしに、ヒマラヤに戻ります」と、後で「何言ってるんだ、俺?」と思う事を口走ったおかげで今の彼があります。清掃登山は命がけ、実際に死人も出る中で、自分は本当に正しいことをしているのか?と葛藤しながらヒマラヤを歩き続ける前半部は読んでいて心を打たれます。
後半は、富士山での活動についての紹介。ゴミ拾いはいいけれど、拾った何トンものゴミはいったい誰が処分するのか、どう企画し、継続するのか、自治体間でたらい回しにされ、市民運動やNPO同士の縄張り争いに翻弄され、ここでも著者は悩みます。
華々しく見える「活動」の舞台裏はそんなに甘いものではなく、何度もくじけそうになる著者を支えたヒマラヤのシェルパ仲間や登山仲間達。大きな事をするにはお金と権力がいることを熟知して、彼なりの人脈を駆使して政治家、企業、マスコミを渡り歩く「山の外」の彼の活動の紹介は、読者によって好き嫌いが出るかも知れませんが、私は「あり」だと思いました。
富士山の現状を知るだけでなく、「野口健とは何者か?」を理解する上でよい本思います。これを入り口に、彼の20代の著作をもっと読んでみたくなります。