かなり気合いの入った、同郷の長部日出雄さんが太宰の名文を選んで解説したアンソロジー。
太宰治はタイトル、出だし、エンディングが抜群に上手いという長部さんの指摘にはハッとさせられました。
小学校高学年から中学校低学年にかけて太宰治にハマって、その後も好きなんだけど、それほど深くは読んでいない、という人は多いんじゃないかと思うのですが、もし、そんな層をターゲットにしようと新潮社の編集が考えたら、少なくとも個人的にはクリーンヒット。
『満願』のラストに《医者が若い夫人に何を禁じ、その日、何のおゆるしが出たのかは、あらためていうまでもないであろうけれど、それが「言外の意味」として表現されたところから、明るいエロチシズムと生きる歓びを、読む者にまざまざと伝える清新な感動が生まれた》という、なんつうか"賛"みたいなものを書く長部さんに共感します。
太宰の文章は絵画を感じます(『黄金風景』のラストとか!)。だから、この文庫本も、全体のつくりが右頁に絵があって、それに賛をつけるような感じになっている感じがいいんですよねぇ。あと、長部さんは太宰治の明るいエロチシズムと笑いを強調するんですが、それも随分と感じさせられました。