「新潮・現代世界の文学」で出ているものはタイミングを逃がしてついに手に入らなかったので、岩波の文庫化でやっと読みました。
本作は、巻末の「訳者あとがき」でも触れられているように、「時間や空間の枠組みを取り外して、毎日の出来事も、過去の出来事も、目の前のことも、遠い森のなかで起こっていることも」「同時に語っていくやり方」を採っています。そう聞くと、なにやら難解複雑でたじろぎそうになるかもしれませんが、ただ、「実行されてみると、特別、変わった方法ではな」く、これまでに何冊かリョサの著作に親しんだ方であれば、「緑の家」ほど「セルバ」で迷子になることはないと思います。「語り」によって残された痕跡を丹念にたどっていけば、その「密林」性こそリョサの楽しみどころであるので、南米の作品を読みなれている方は、むしろ物足らなさを覚えるかもしれません。
内容については、読む楽しみを削ぎかねないので遠慮しますが、「話をするということは単なる娯楽以上のものになりうる」「何か本源的なもの。一つの民族の存在そのものがかかっている」(P128)と定義する「語り」という行為の在り方や扱い方については、あらかじめ念頭に置いて読んでいくと、深い読みにスムーズに入っていけるように思います。