図版や写真を豊富に用い、鯱張らない平易な文章で「入門書として素晴らしい出来」とハードコア・オカルト専門家筋からの評価も高い学研ブックス・エソテリカシリーズの第一弾。この一冊で密教の意義、歴史、密教僧名人伝等から寺院ガイド、各仏尊の性格と御利益、修法の執り行い方まで密教に関する知識が全体的に、かつそこそこ詳しく入手できるので宗教に関心を持つ者にとっては役立つことしきりである。
学研でオカルトと聞けば、看板雑誌「ムー」のすべてにおいて中途半端で編集者がネタとして書いてるのかそれとも本気なのか分かりにくい、ありていにいってキバヤシチックな文体が思い浮かぶが、本書は全くそんなことは無く、むしろ核心を確実に突きつつ難解な表現を避け万人が読みやすい文章にしている編集姿勢に大いに好感が持てる。
さて、内容だが、やはり面白いのは密教僧偉人伝であろうか。「虚空蔵求聞持聡明法」を完璧に修したとされる天才・空海と、水銀鉱脈-山師との知られざる関連について書いたコラムなどは非常に興味をそそられる。役小角や文観らもまた魅力的である。実行する機会は実生活上あまりないだろうが、修法の手順を詳説した章や、曼荼羅の解説などは一読の価値有りである。「阿字観」を実際にやってみるのもいいだろう。また、巻末企画の真言・種字・語利益・修法のやりかた付きの仏尊リストはコンパクトに纏めてあり実用的。総合して、空海や最澄らが当時行き詰まっていた奈良仏教に対して、万人が分かる(理論ではなく直感・本能的に)新しい仏教の形を示そうと伝教した「密教」の魅力を、ビジュアルの多用により余す所無く表現した好著だといえよう。
さらに詳しい情報をお望みの向きには同シリーズの「天台密教の本」「真言密教の本」がおすすめ。