1906年というからすでに100年以上前。全寮制の学校にいる主人公が抱く「空虚」感がたまりません。一応、両親から離れたことがその原因らしく書き初められていますが、そもそもこの世界に原則的・根源的に追い求めるべきものなどないのだという「感じ」はとんでもなく現代的。いじめあり、同性愛あり、思春期の反抗あり。盛りだくさんです。
「空虚」を充たそうとして主人公が向かうのが「知の世界」と「性の世界」。虚数や無限、カント哲学に魅了され、娼婦や美しい同級生男子によろめく。しかし、結局充たされないことを確信して成長するという正統的な、いかにもカントを勉強している「超越論的」小説です。現実が「空虚」で充たされないのは、あまりに理想を高く設定し、近づくとさらに高く設定し直すから、つまり、超越的なものの存在を信じているからです。だからこその思春期!
少しばかり説明過多な前半と比べて、加速度的に主題が展開する後半がすばらしいです。ぜひ高校生、大学生に読み通していただきたい古典的傑作。