スクラムハーフのはしくれが我が家にもいる。そして、僕はラグビーに関して(勉強不足で)詳しくない。
しかし、昨年の宿澤氏逝去は今でも強く印象に残っており、書店で本書を見つけて、控えめな表情の表紙写真とタイトルに惹かれて買った。
「運を支配した男」というが、ページが進むにつれて、それは二面性を持つことがわかる。
徹底的な努力をし、考え抜き「勝つ」ことに執念を持ち続けたことと、
止まれば自分はどうなるかわからないという獏とした不安感に「負けない」という意識、本書は彼の生き方をこう解釈している。
人脈に恵まれたことを始めとして、強運の持ち主であったようではある。
しかしその生き様は壮絶であり、そして爽快でもある。これは、ノーサイドの精神の発露なのだろうか。
前半は“人間 宿澤広朗”に関する記述が多く、買ってすぐ電車の中で読みながら笑いを堪える場面も結構あった。とても、人間くさい方だったようだ。
後半、銀行幹部として見せる獅子奮迅の活躍と、ラグビー協会理事としての苦闘は対照的様相を見せる。
いずれも、秘守の面からどこまでが真実かはわかるはずもないし、人によって見方は全く変わるであろう。
しかし、どちらにおいても底流には、他人に計り知れない重圧、苦悩があったことは想像に難くない。
傍目には華やかさに包まれ続けた人生に見えるが、宿澤氏にとっては、
特にラグビーに関して自分が理想とすることをどこまで実現できたかという点で、無念があったのではと拝察する。
最後に、本書はビジネスリーダーの本質を平易に説く書としても優れている。
宿澤氏自身の、そして業務で関わった方達の言葉には、現場感覚を持った多くの含蓄があり、机上の空理空論は一切ない。
これもまた、本書に爽やかな読後感をもたらしている。