本書は、昔献本してもらったけどうっぱらってしまい、今回お勉強のために買い直したんだが……
基本的な話として、小野善康をほめたいならケインズを持ち出さずに小野理論それ自体として説明してほしい。ケインズの話になっていない。
そしてまず、小野によるケインズ乗数効果批判が出てくるが、これがひどい。なんでもこれはケインズの枠組みの中ですら矛盾なんだって。なぜかというと、有効需要を増やすために公共事業をやったら、そのお金は税金で人々の可処分所得からぶんどることになる。だから可処分所得が減ってしまう。でもケインズの当初の仮定では、それは変わらないことになっているはずだからこれは矛盾だ!!(p.41)
はあ??? 小島&小野ワールドでは、公共事業するとき、その場ですぐ増税するんですかぁ??
普通は、国債出したりするでしょう。景気刺激が要るほど消費が落ち込んでるときに増税するなんて、いまの日本の政府ぐらいの経済オンチじゃないとやらないよ。賢い消費者はそれに伴う将来の増税を期待に織り込みますです! 合理的期待形成しる! とまで言う気ならアレだが、中立命題を考えたリカードですら、そんなことは実際には起きず極論だと言っている。この程度の現実認識で経済の話をしようとは……
一般向けの概説書に、変なの極論をしょっぱなから持ってきて、いったい小島寛之は何を考えておるのだ。しかし、これがもし小野理論の忠実な反映なら、なぜ小野善康が増税容認論を口走るのか、なんとなく見えてくる。
現実の経済とはかけはなれた理解に基づき、ケインズ理論を歪曲した説明。いきなりこれなので、その先はもう読みません……といいつつ流し読みしたけど、最後の意志決定理論でないと流不確実性云々の話は、まあ別に大きく異論はございませんよ。でも、それがどうした、という感じ。ケインズ理解に全然役立たないどころか、きわめて有害。