宮本の郷里は山口県大島郡。彼がまだ幼かった頃の、故郷での暮らしぶりを克明に
描いた生活誌。村のしきたり、生計の立て方、子どもの扱いや遊び、躾のありかた
などが彼の思い出と共に綴られている。読み進めていくうち、章立てになったそれ
らのテーマがバラバラなものではないことに気づく。様々な不文律や互助的なイベ
ントを通して、重層的で手厚いネットワークが形成されているのだ。それをインフ
ラに、発育に応じて技術や価値を習得する仕掛けがきちんと用意されている。
そこに、最も身近な存在である家庭や親の生き様が、それらのインフラとうまくかみ
あう形で総体として機能したり影響する時、最高の学習環境が実現するのかも知れぬ。
それは同時に村の全ての人々がしあわせになることを願う仕掛けでもある。蟻の生活
にも感じるあの本能的な機能美は何だろう。それにしても、著者の父親の人となりに
触れた「父親の躾」は感動的。宮本の父は一介の百姓にすぎない。しかし、あの真剣
な生き様に胸打たれない男はまずいないだろう。素晴らしい本である。