東北アジア一帯に広く分布する祖霊信仰。つまり生命の連続を意識した宗教感情。日本人が仏教であると意識している、法事や墓参り葬送儀礼などもみな、仏教伝播の過程で中国大陸を通過する際に取り入れられたものだという。むしろ東北アジアの宗教感情を抽出する形で儒教が生まれ、同じ根をもつ古代の日本人にもすんなりと受け入れられたのだという。近代の西洋風な家族観念は学校教育や法制度によって確固たる基盤を築いているように見えても、生活に根をおろしているのは、むしろ儒教的な家族観念であり、それと西洋風の家族観念が分裂をきたしているのが現代日本に生きる我々の心的状況だという。これをもう一度、儒教的家族観念を取り戻すべきだというのが著者の主張。少子化に対する施策提言や男女別姓の問題に対する提言など、中国古典の知恵を現代に活かす試みを列挙する意欲的な書。神道の変遷や柳田民俗学などの習俗・民俗宗教との関連が記述の中にあまり感じられなく、「東北アジア一帯の祖霊信仰」と一括しているところが、少々不満。その関係を研究した著書があれば、本書と関連付けて読んでみたい。