1.内容
最近は昭和30年代が注目されている(ようだ)。みんな貧しかったが、希望の持てる時代だったとして。しかし、実際はどうなのだろうか?ところで、主に社会学者からなる研究グループが、SSM調査(社会階層と移動全国調査)を、1955年から10年ごとに行っているが、欠点はあるけれども、「一九六五年時点の女性についての情報を含む、奇跡のようなデータの存在に気がついた」(p13)。そこで、この調査を用いて、昭和30年代の実相を明らかにしようと試みたのがこの本である。なお、この本の「データは、あくまでも二十歳から六十九歳までの男性を対象とする調査データから派生的に作成されたもの」(p34)なので、若干不正確なのはやむを得ない。そこで明らかになったことは、例えば、p60「当時の日本社会が、多様な就業構造を持ち、しかもきわめて大きな格差をはらんだ、互いに異質な世帯諸類型の集積によって成り立っていた」、p85「『企業福祉』は、主に大企業の正社員だけが恩恵の対象であり、中小零細被雇用者や非正規雇用者、自営業、農民などには適用されなかった」、p137「一九六五年は、それ以降と比較すると全般的に移動の機会が少なく、それぞれの職業カテゴリー間の障壁が高かった」、p172(要約)独身男は階級や年齢によって大きな影響を受け、結婚圧力が厳しかった、p206「戦争が与える痛みも平等ではな」い(学歴や階級で異なる)、p227「族籍(中略)地主―小作関係は(中略)一九六五年においても、日本の社会構造に深い影を落としていた」といったように、昭和30年代は厳然とした不平等な社会だったということである。
2.評価
どんな時代も不平等はあるし、社会学的調査だけなので(税制の問題がないので)少々浅いと思われるところがあるが、現在に比べても階級の移動可能性がそんなにあったわけではないことを明らかにし、1960年代の厳しさを指摘できているので、星5つ。