女流探偵小説家は数えるほどしかいないが、私ならこの人を推す。
処女作は戦前だが、活躍したのは終戦で満洲から引き上げてからの事。後の仁木悦子と比較しても、探偵小説の本来もつネットリとした肌合が魅力。
作品の質にもムラがなく、心理描写に長け登場人物の境遇・性格に作者自身がかなり投影されている。
この『論創ミステリ叢書』で一作家複数巻の場合、「2」よりも「1」、即ち執筆後期より前期が良作であるケースが多い。
だが宮野叢子の場合そんなことはなく、本書「2」には1958年の傑作短篇集『紫苑屋敷の謎』をまるごと収録。
よって力作『鯉沼家の悲劇』収録の「1」も良いが、あえて今回は「2」を紹介した。
他「愛憎の倫理」「ヘリオトロープ」「廃園の扉」等を含み18短篇中11作を単行本初収録。
戦後探偵小説「文学派」の一人な訳で、トリック趣味は薄いが、師匠格の木々高太郎より物語力は優秀。
元々7冊しか著書がなくずっと復刻されなかった。風格のあるキラー長篇を1〜2作書いていれば、もっと成功した筈だ。
編者日下三蔵氏よ、残りの作品もどうにかして刊行頼む。
さて『論創ミステリ叢書』も2010年で早や47冊。この難行を継続してくれているのには感謝するばかりだ。
中には市場から姿を消しつつある巻がある。
今なら新品美本で入手できる。あとで後悔の無いよう、気になる作家だけでも今のうちに入手しておくのが吉。