ロジャー・パルバース氏(東京工業大学世界文明センター長)が、全体を4つのセクションに分けて「宮沢賢治」と彼の遺作「銀河鉄道の夜」を、やさしく丁寧な日本語で分かりやすく語ります。
【はじめに】〜世界に生きるすべての人へ
第1回賢治の伝言
〜・賢治の故郷である被災地で
・賢治作品のバックボーンにあるものとは?
・生きることが贖罪だった
・賢治が作家として評価されてこなかった理由
・『銀河鉄道の夜』は大人の童話
・希望へとつながる想像力
第2回悲しみを希望へ
〜・「永訣の朝」と『銀河鉄道の夜』
・賢治はgriefをどう受け入れたのか
・ジョバンニが学んだ「生と死」の意味
・喪失の悲しみを、いかにして乗り越えるか
・私はあなたであり、あなたは私である
第3回みんなつながっている
〜・自然は「ライフブラッド」
・「自然の報告者」としての賢治
・人間は「分子」のひとつである
・「インドラの網」の意味
・すべての行ないは巡る
第4回ほんとうの幸い
〜・二十一世紀の作家、宮沢賢治
・動物といかにして共生するか
・賢治はなぜ震災を描かなかったか
・僕たちの「いちばんの幸い」はなんだろう
宮沢賢治に対するロジャー氏の敬意に、私は脱帽した。
【はじめに】では、今から40年以上前、氏が賢治の著作「ざしき童子のはなし」を初めて読み、それから岩手花巻を訪れ、賢治実弟の清六氏とお会いし親しい仲になったということが書かれていた。
それから幾度も『銀河鉄道の夜』の英訳を試みたという。この触りの部分を書店で立ち読みし、私は購入を決意した。
構成がまた秀逸。
回を追うごとにロジャー氏が伝えんとする賢治の、信念、願い、思想、幸い、そういったものが効果的に読み進めていくことができた。
作家の肩書きは伊達じゃない。
また第3回では賢治の特異性を示すために、泉鏡花、ゴッホ、ルイス・キャロル、ウォルト・ディズニー、アンデルセンなどが比較に用いられたが、なるほど、私も「賢治の一番の才能は、想像力の豊かさ」と思っていたが、これは誤りだとを知って驚く。たしかに手塚治虫や藤子・F・不二雄とも違うわけだ。とくに動物について論じるとなると・・・。まさに素晴らしい見解に出会えた。
宮沢賢治入門書としても悪くはないけれど、やはり賢治の作品や賢治の伝記を読んで、ある程度の予備知識がある人が読むのがよいのだと思う。
というのは、引用や紹介もたしかに豊富にあるのだけれど、ロジャー氏が【はじめに】で書いた自身の体験談よろしく、まず賢治の作品から始めて、それで興味が湧いてもっと知りたいと思ったら、この本を手に取る。
そうしてロジャー氏の軌跡を、賢治の導きで辿るのも、また一興ではないだろうか。