水仙忌…宮本常一の命日の頃には水仙が咲く…故郷の周防大島では毎年「水仙忌」の法要が行われる。生きていれば今年100歳になっているが、民俗学に殉じた73歳の生涯だった。 本書は、まず宮本民俗学の原点として、ふるさとの海辺の暮らし、島を見つめるまなざしを紹介する。ありふれたものへ関心の目を注ぎ、「つまみぐいをせず」景観からヒトの営みをさぐる。
そして、日本を想う旅が始まる。その旅路で、人々の話に耳を傾け、風景や建物、モノや道具を写真におさめた。そうして、名もなき人々のこころの奥底にある記憶を呼び覚まし、書き記すことで、古來からの人々の暮らしを探った。十万点とも言われる膨大な蒐集記録のほんの一部を紹介している。写真中心なので手に取るように資料が鮮やかに浮かんでくる。
ただ示すだけではない。今、日本で問題になっている格差社会への疑問を投げかけている。
まこと、この民俗学者に【思いやりある詩人】の面影を感じずにはいられない。