キューブリックや黒澤明など、実写映画では様々な研究書/インタビュー/伝記/評論などが出ているにもかかわらず、アニメーション映画について技術的な側面や現場スタッフへの取材から書かれていることは非常に希だ。宮崎駿作品が世間的に注目されはじめたのは1980年代末からなので、アニメーションの歴史や技術的側面を知らない既存の実写映画の批評家/評論家の批評は的外れなことが少なくないし、実りのあるインタビューも少ない。宮崎駿は現役のアニメーションの映画監督であり、思想家ではないのだから、ちゃんとした作品論は待望されていたと思う。
この本はその第一歩といえるものになると思う。惜しむらくは、ページ数の制限などからだと思うが、データ部分と論考部分がいずれもやや物足りない。データ的な部分に関しては、日付(書籍では月日まで)も欲しかったし、論考部分では引用が多く、この筆者の独自見解が充分に展開されていない(個々の話は興味深いので、もっと突っ込んで書いて欲しい)。
フィルモグラフィー順に解説が進められており、読みやすい文体で、これまで明らかにされていなかったこと(たとえばカリ城の興行成績の実際の数値)が検討されている。
宮崎作品を体系的に観ていきたい人にはお勧めできます。