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扱われるテーマは宮崎駿の趣味性が制約なしに現れており、エレクトロニクスではなく機械制御しかなかった時代の兵器が、それを運用する人間の悲喜劇とともに描かれる。とはいえキャラがブタキャラ、犬キャラや4頭身のオヤジキャラ(ラピュラに出て来るタイガーモス号の機関長のようなキャラ)で描かれているなど、全体には宮崎駿調ユーモアにあふれており、全ページ彩色、コマ割の枠も手書きといういつもの宮崎漫画スタイル。
第一次大戦後に考案された空中戦艦こと巨大爆撃機(エンジンが非力すぎ低空低速でしか飛べなかった)や多砲塔戦車(鈍足すぎて戦場では使い物にならなかった)、日本の仮装特設空母(商船を改造)と旧式複葉攻撃機、日中戦争時の中国空軍による日本本土爆撃行、太平洋戦争末期の漁船を改造した哨戒艇(戦力というより捨石的使い方をされた)とB-25との戦い、第一次大戦期のドイツ空軍によるロンドン爆撃行などなど。
全体にメカニカルな機械に対する偏愛と、それらを悪戦苦闘して運用する人への愛着を感じることができる。宮崎駿には早く新作映画を作って欲しいな、と思う一方でこういう趣味性にあふれた作品をもっと書いて欲しいなとも思う。余談だが、福井敏晴の小説「終戦のローレライ」に登場する20センチ砲を搭載したフランスの潜水艦シュルクーフも珍潜水艦として紹介されている。
なかでも第9話「特設空母 安松丸物語」と第13話「豚の虎」は必見。魚雷の重さ(800kgもあるのをたった700馬力ほどのエンジンで空に飛ばすのです)、戦車の重さ(57トンもある車体をたった300馬力のエンジン発電機とモーターで動かそうというのです)が、ひしひしと伝わってきます。ストーリーは血湧き肉躍る男の子向け正統派。だからといってご都合主義なお子さまランチじゃない。徹底的にメカにこだわる描写は、組織や人間にも分厚いリアリティを与え、大人の鑑賞に耐えうる骨太のストーリーが展開されています(この短いなかで!)。
何言ってるんだこのレビューは…と思われるかもしれませんが、本書を読まれれば必ず納得。宮崎駿のいちばん濃い部分はこの本にこそあるのです。大作アニメは全部出し殻・薄味・妥協の産物です。アニメでしか宮崎駿を知らないあなたは、まだ本当の彼を知らない。とにかくすんっっっっごく面白い本ですから、少々高価なのには目をつぶって、買って読んでください。お願いします。
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