ベルリン映画祭最優秀賞、米アカデミー賞長編アニメーション部門オスカー獲得など、いまやクロサワに並ぶ世界の巨匠として認められたアニメーション界の巨人・宮崎駿。しかし、こうした栄光とは裏腹に、作品への、ひいては宮崎ブランドそのものへの疑問の声は日本国内では年を追うごとに強まるばかりだ。
「宮崎さん」という日本最強のブランドはどう始まり、どんな作品遍歴をたどり、そして善悪含めてどんな現象を巻き起こしていったのか。個々の作品の分析に始まり、日本アニメ史における宮崎作品の位置づけを再考しつつ、これまで指摘されることはあっても正面より論じられることは実はほとんどなかった作者のアノマリーを追い、海外進出の難しさ、そして宮崎ブランドの弊害にまで迫る。
凡百の類似書とは一線を画する野心的論考集。その情報量とともに読みやすさ、分かりやすさは折り紙つき。海外メディアで活躍する著者の洞察力が冴え渡る!
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あこれ読んだことある。以前どこかでネット連載してたもののバージョン・アップですね。懐かしさとともに445頁を一気に読み通せました。
トトロの設定への突っ込みとか(かなり説得力がある)、『もののけ姫』大ヒットの舞台裏の話とかは旧版といっしょだけど、監督の経歴紹介が格段に詳しくなっているうえに、データも豊富。引用だらけだという向きもあるかもしれないが、論文で引用は当たり前のことだし、そのうえでの補助線いっぱつ解法が随所にあっていかにもこの著者らしい。
魔女っ子アニメの歩みを良い娘をキーワードに整理していくところに『紅一点論』の影響あり。ミンキーモモは良い義妹でベルダンディーは良い彼女、木ノ本さくらは良い娘・義妹・彼女の融合だから受けたという結論には正直ウケタ。『魔女宅』のキキは良い娘→悪い娘に移る過渡期の魔女っ子で、セラムンは悪い娘系魔女っ子第一号とか、読んでいくと思わずうなずいてしまう分析はお勧め。
なんか発想が理科系っぽいのが文系の私のコンプレックスをちくちくしたのでひとつだけ減点!
トトロを小説版との比較よりその欺瞞性をあばきたて、魔女宅の話題から女の子アニメの深層構造をあぶりだし、紅の豚で作者の思想遍歴を追い、もののけ姫でその制作方式の限界を指摘してきます。正直、かなりエグイです。
圧巻はやはりマンガ版ナウシカの解読でしょうか。データをもとに作者の内的コンプレックスにまで踏み込んでいく過程はスリリング。個人的には千尋のヒットの原因の分析が楽しめた。宮崎ブランドのからくりがあきれるほど明晰に語られていく。
でも、信者のひとにはおそらく耐えられない本でしょうね。きちんと読み通さずにあれこれ言い出す読者がいたら、それはまずまちがいなく「宮崎さん」信者の類です。
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