本書は2部構成となっており、第1部は日経新聞の私の履歴書に書かれた、西岡氏の半生、
第2部は生前に西岡氏と関係のあった弟子、職人、学者、息子などが西岡氏について語っています。
第1部では、西岡氏の人柄や祖父の代から引き継いできた大工としての想いが描かれています。
大工になる前に祖父の命で工業学校ではなく、農業学校へ生かされ、土を知り、木を学んだこと、
そして、農業学校を卒業した後に、1年間の期限付きで農業をさせられたことなども書かれており、
その際に他の農家と比べて自分の収穫が少ないことを祖父から
「おまえは稲を作りながら、稲と話し合いせずに本と話し合いをしていた。」と指摘されたエピソード
などもあり、改めて仕事の本質はどんなことでも変わりがないことを思い知らされた気がしました。
また、大工としてのこだわりにも驚かされます。
飛鳥時代の大工が使用していた工具の復活や、300年、500年ではなく1000年先も立派に建ち続ける
ものを作りたいと大学の教授と論争したりなど非常に高いプロ意識がうかがわれます。
その一方で、人の育成や、人を立てる術を知っており、またそれを実践する西岡氏の魅力的な人柄
も感じられる内容です。
第2部も弟子や職人の方など素朴でありながらも、しみじみと語られる西岡氏の話の中には非常に
深い味わいがあると感じます。