この場所が一躍世界規模で有名になったのはパトリシア・コーンウェルの同名小説で取り上げられたからだという。死体に関する優れたノンフィクション「死体はみんな生きている」にも登場したし、ディスカバリー・チャンネルで紹介されもした。要するに、献体された死体を様々な状態で腐敗させ、死亡推定時刻の測定に活かすための施設(正式名称は「テネシー大学人類学施設」)の創設者の話なのだ。
とはいえ、本書の大半は死体農場に関する話ではなく、アメリカ法人類学の草分け的存在としての彼の半生を辿りながら、様々な骨の鑑定を行う話であり、一般読者に向けてか、非常にわかりやすく読みやすい本になっている。殺人事件を中心に、腐敗や虫や骨の話となれば、敬遠したくなる人も多いだろうが、施設の人気を考えると(「人体の不思議」展人気にも通じるだろうか?)、だからこそ人の興味を惹きつける何かがあるのだろう。骨に関する蘊蓄(なぜ黒人の水泳選手はいないのか?などなど、既に知っていれば別だが)も仕入れられるし、何より地道な活動に頭が下る思いがする。現在活躍しているアメリカの法医学者の多くが、彼の下で学んだという。専門的な内容を求める読者には物足りないかもしれないが、逆に多くの人に手軽に読んでもらえる入門書と言えるだろう。