この書籍が対象とする読者は,Linux OS についての基本的な概念を理解している方,すなわち,Linux の一般ユーザーとしての経験が多少なりともある方だと思われます.そのような方がこの書籍を自習書とし,CentOS のサーバー管理者として入門を果たすことができるか? もちろんそれは可能でしょうが,あまり効率良くことが運ぶとは思えません.
例えばこの書籍では,ある章で登場したコマンドの詳しい説明が,ずっと後ろの章で現れる,というような「前方参照」がしばしば見受けられます.これは自習書としては小さからぬ欠点です.コンテンツの配列をもっと推敲できなかったものかという強い疑問がわきます.これでは急ごしらえで著された書籍という印象を免れません.
さてこの書籍の内容は,システム管理とサーバー構築に必要な,基本的なコマンドと設定ファイルの解説です.商品の説明には「操作や設定の具体例を豊富に収録」とありますが,「豊富に」というより「最低限」というべきでしょう.例えば,ひとつの設定ファイルに対して,典型的な設定例がひとつ示されるだけで,その解説も与えられません.示された設定例を自分の環境に合わせてどうカスタマイズしたら良いか,あるいは,設定に自由度があるとき,どういう設定を選ぶのがベターなのか,そういう情報はこの書籍の中にはありません.
もっともこのサイズの書籍でわずか 270 ページというボリュームですから,そこまで求めるのは酷でしょうね.購入される方はそれを前提とされるべきです.
実は,情報工学系の大学生をシステム管理者へと育てる取っ掛かりとしてこの書籍を候補のひとつに考えたのですが,あまり適切ではないかな,ということで,採用を見送りました.