勝又六段は、序盤戦術や最終盤の寄せに関する素晴らしい研究家で、PCを使って各種の生データを幅広く駆使した歯切れ良い解説が非常に好評を博している。まさに“教授”という尊称がピッタリで、プロ棋士の中でも“異才”と言えようか。
その勝又“教授”が、専門分野の「寄せ、詰み」の部分の考え方を、子供向けのやさしい例題から一流プロの実戦例へ、という流れで懇切丁寧に解説してくれている。
私は詰将棋が好きなのだが、これは、駒の配置から持駒まで、局面が全部キッチリ決まっている。これだって十分に考え甲斐があるのだが、本書では、
「持駒に何があったら詰むか」
と、もう一歩先までもの読みを要求される。寄せや詰みの手筋を数多く身につけるのが重要なのは言うまでもないが、「何を持っているから(必ず)詰む」ではなく、「詰ませるのに何が必要か」というのは、まさに“逆転の発想”、とても新鮮だ。
つまり、「相手を詰ませるのに何が要るか」 → 「その駒は盤面のどこに落ちているか」 → 「それをいかにして奪いに行くか」と、どんどん読みを広げ深め究める必要が生じるからだ。
将棋は、詰将棋のように一部を切り取った局面だけでなく、全体の大きな流れの中でこそ初めて成立するもの、とあらためて気づかされる。
逆の立場に立った、「自玉は何を合い駒に使えば詰まないか」という問題も取り上げられている。プロでも合い駒を間違って負けた実戦は多い。「安い駒を合い駒したから詰まされた」ということが多いヘボとしてはましてや悩みどころだ。だから、「こんな逃れ方があるのか」と感動してしまう実話も多い。
寄せの実力養成に必携の名著と思う。